男性脳のニーズを探り、辿り着いたクラウドファンディング

宮田:これで僕たちのNPOも安泰だと思ったのですが、2015年の円安によって日本で集めた事業資金が、為替レートの影響で現地に届く頃には、半分に目減りしてしまいました。
ケニアの診療所を閉鎖しなければならない、これで終わりだ、という事態になってしまったんです。その時出会ったのが、クラウドファンディングでした。

佐々木: チャイルドドクター制度を使って寄付してくれている方に、もう少し金額を増やしてもらう、という選択肢もあったと思います。
どうしてそれではなく、クラウドファンディングを利用したのでしょうか?

宮田:増やしてもらおうと連絡したんですが、ボーナスがカットされたとか色々な理由を言われ、断られたんです。
そこで、思い切って1回断られた方に、診療所が潰れそうなのでオーナーになって貰えませんかと尋ねたら、「それだったらいいよ、いくら?」と言われました。これまで40人ほどに連絡して断られた後だったので、すごく嬉しかった。もしかすると、ここヒントがあるんじゃないか、と思いました。

佐々木:インタビューをさせていただいて、宮田さんは、支援者にどんな人がいるかということを、細かく調べているという印象を受けました。
チャイルドドクター制度は、毎月1000円から2000円を継続的に寄付する仕組みです。
現地から送られてくるメッセージに支援者が返信することもできるんですが、返事を書くのは女性しかいなくて、男性はメッセージを受け取る人ばかりだということがわかった、と聞きました。それで、宮田さんは、男性の本当のニーズをつかめていないんじゃないかと思われたんですよね。

宮田:そうなんです。

佐々木:はじめは、クラウドファンディングを使うつもりはなく、メディアに声をかけようと思っていたそうですね。

宮田:テレビの威力は凄まじいと感じています。事業資金を一切使わず、費用対効果が高い。
チャイルドドクター制度の時は、テレビを見た人が心を揺さぶられて、支援に結びつきました。だから、もう一度とテレビ局に声をかけたのですが、取り上げてくれるところがありませんでした。
それで、継続的な資金援助でなく、1回の援助をお願いしようと思ったんです。診療所が1年持てばなんとかなるんじゃないかと。先ほどお話したように、診療所のオーナーになってもいいという人がいるわけで、もしかしたら男性と女性では、援助の仕方が違うんじゃないかと考えました。

男性的な考え方、女性的な考え方をするという意味で「男性脳」「女性脳」と言っています。
男性脳の人は、自分の中で優先順位が1位のものにお金を使うことで満足を感じる。例えば、アフリカの貧困を激変させるシステムを作りたい、アジアに学校を作るために寄付したい、月の土地を買いたいといった人も男性が多いようです。
1回の援助をお願いするならばクラウドファンディングが適しているだろうと決めました。


「〈後編〉クラウドファンディングをどう使うか、活動の本質を突き詰めて考える」に続く…こちら

クラウドファンディングに至る詳しい経緯は、ぜひ本著でお楽しみください
著者に聞く クラウドファンディング