「シリーズ 著者に聞く!」は、本の編著者や関係者に直接質問をぶつけ、本に納まらなかった知識や経験を聞きだそうという試みです。
第1回目『ぼくらがクラウドファンディングを使う理由(わけ)』(学芸出版社)の編著者でクラウドファンディングの実践者をインタビューし、プロジェクトを分析した佐々木周作さん(大阪大学大学院経済学研究科博士後期課程/日本学術振興会特別研究員)と、ケニアの診療所の資金調達にクラウドファンディングを活用したNPOチャイルドドクター・ジャパン理事 宮田久也さんに伺いました。
クラウドファンディングを肌感覚で伝えたかった -佐々木周作
佐々木:僕が、なぜこの本を書こうと思ったかというと、これからクラウドファンディングを使う人たちにとって、実際に資金調達した人たちがクラウドファンディングで何をしたのか、どのような大変さ、面倒くささがあったのかを肌感覚でわかるようにしたかった。そうじゃないとクラウドファンディングに一歩踏み出せないんじゃないかと思ったからです。
今回、自己紹介代わりに『食べ物屋の昭和 伝えたい味と記憶』(岩崎信也 著、新潮文庫)を持ってきました。
岩崎さん自身が、戦中、戦後の日本の老舗料理屋の店主に直接話を聞いてまとめたものですが、料理を通して店主の人生や起業家精神が伝わってくる本です。
この本を読んで、『ぼくらがクラウドファンディングを使う理由(わけ)』でも、単純なノウハウだけでなく、資金調達をした方々のライフストーリーまで見えるようにしたいと思いました。
「俺、死ぬんかな」と思った時、何もしてこなかったことを後悔した –宮田久也
宮田:僕たちは、アフリカのケニアに診療所を置いて活動しています。搬送車でスラムに子供たちを迎えに行き、診療所に連れてきて医師が治療をします。
僕がどうしてこうした活動をするに至ったのかというと、大学のときに友人から借りた『息子への手紙』(中田武仁 著、朝日新聞社出版〈絶版〉)という、カンボジアでPKO活動をしていて殺害された中田厚仁さんの父親が書いた本を読んで、自分も亡くなった厚仁さんのようになりたいと思ったからです。
厚仁さんは、世界30カ国を訪れ、1年間留学して、カンボジアで国連ボランティアをしていました。だから、僕も学生の頃に世界一周し、1年間カナダに留学しました。
その時、地下鉄で、突然、暴漢に胸部を4回刺されたんです。服の中に手を入れてみたら手の平が真っ赤になって、でも、犯人がナイフを持っているのがわかっていたから、捕まえないとまた誰かが刺されると思って追いかけた。周りの人があっちだと、タクシーに乗って逃げたと言うので、タクシーを追ったんです。
そうしたら、偶然タクシーが止まって、中から犯人が降りてきた。殺られる!と思い「警察を読んでくれ!」と叫ぶと、犯人がポケットから携帯電話を出して「俺が電話してやろうか」と言うんです。後で聞いてみたら麻薬中毒者だったんです。
救急車を待って座っているとだんだん呼吸ができなくなってきて、「俺、死ぬんかな」と初めて思いました。その時、自分が他の人に何もしてこなかった、何も残さないで死ぬことの悔しさを感じて、もうちょっと生きてみたいと思いました。
それまでは、商社でばんばんビジネスをやってやろうと思っていたんですが、退院する時には、アフリカに行って人の役に立つ仕事に関わりたいという思いに変わっていました。