ラジオは人を救わない。正直、救えない、ということです ー山田ルイ53世

田中 最後に、「救い」について話をしたいと思います。男爵の言葉で、僕は「ラジオは人を救わない」というのが好きですね。

山田 特にラジオは、リスナーとの距離が近いから相談のようながメールで着て、「ラジオで、少しでもみんなに声が届けば、救いになるのではないか」「誰かが勇気付けられたらと思って」みたいなことを言いがちなパーソナリティーが多いな、という印象があったんです。
僕の番組は、一切誰も救わない、というか、正直、救えないということです。救うと言うのもおこがましい、という気持ちもあります。

田中 でも、なまじっか「救いますよ」と言っている番組よりも、救わないよということを断言して放送されていることによって、すごくフラットな空気を生んでいるんだと思いました。
『ルネッサンスラジオ』のリスナーが参加するトークライブに行って実感したのですが、いろいろな人が来ているなと本当に思ったんですね。若い方もいれば、中高年の方も、男性も女性もいて、リスナーの方の偏りがない。
ラジオでは、特に悩みを相談してくださいと言っているわけではないのに、びっくりするぐらい深刻なメールが、急に来たりしますよね(笑)。

山田 確かにメールのカロリーが高いというか、すごい。相談とかではないんですよね。重たい重たいメールがきます。
この間、よく顔を見せていただける6、70歳ぐらいのおばあちゃんから、「あさって、おっぱいの手術です。生きていたらまたメールします」というメールがきてたんです。1、2週ぐらいしたら、「元気になりました」とまたメールがきてましたけれども。
ほんまやったら深刻に、「大丈夫か。頑張れ」と言うんでしょうけれど、うちの番組だと、「うわ、おまえ、怖いな」「死なんといてや、ほんま」みたいな感じです。そう言われるとわかって送ってきているから、僕も言って大丈夫やなというだけのことなんですけれども。

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「笑い」も社会学も斜に構えること。笑ってやり過ごすことはすごく重要だと思います