中年男よ、生きづらさは「笑い」で切り抜けろ!
“普通”から逸れた時の生き延び方
〈後編 斜に構えて、笑ってやり過ごす〉
負けたときに見えてくる道がある。
「普通から外れる」ことにどう向き合ったのか。怖いけれど、なるべく敵がいないところでエッジを効かせることは生き延びる戦略の1つ、と言うお二人が、人生の岐路でどのような道を選んだのか。
そして、40歳、50歳…となって人生の選択肢が絞られるとき、どのような態度で自分に向き合ったらいいのか。お二人の意見を聞きながら、参加者自身も我が身を振り返り、今後の人生を考える機会になりました。
〈前編 はこちら〉
1つのことに執着するのはいいことと思われがちですが、それが逆に足かせになって新しい展開ができないことがある ー田中俊之
なんぼでもリセットしたらいいのにと思います ー山田ルイ53世
田中俊之 男爵が新聞記者の方からインタビューを受けて、すごく嫌がられたことがあると聞きました。
山田ルイ53世 6年間ひきこもっていましたという話をさせていただくのですが、記者の方は、自分の思っている結論や落とし所が多少あるんです。基本的には美談に仕上げたいので、「あの6年があるから、今の自分があるんです」としたいんですが、僕は、はっきりと、「引きこもっていた6年間は完全に無駄や」と思っているんです。「人生をどぶに捨てている」と言うんです。
普通に考えたら、その間、友達と遊んだほうが絶対楽しいし、学校へ行って勉強した方が絶対充実はしていると思うんです。だから、無駄やと思うんですが、「そんなことを言うなんて」という反発があって。別に僕は自分のことを言うてるだけだから。
田中 本人がそう言っているのに、変ですよね。
対談のときも、なるほどなと思ったのは「リセットすることが悪いと思われている」といことです。「ここでリセット」と思うから次に進めるのに、「この経験を生かさなければ」とか「今まで積んできたものがある」みたいなことにこだわって現状を打破できないことがある。
山田 その裏返しは、やはり「主人公」ではないですが、正当化される自分、正しい自分でないとアカンという圧が強すぎるのではないですか。そこを「ムダだとどぶに捨てましたわ」と言ったら、美談というか、サクセスストーリーというか、頑張りましたという物語から外れてしまう。それを受け入れられない人が多いのではないですか。
田中 本人にとってためになるかどうかよりも、聞いている方が、納得したいという気持ちが上回ってしまっていることが、逆にひきこもっている人に対してプレッシャーになる。つまり、いま現に引きこもっている人が、これを生かさなければとか、これは何かにつながるんだと思ってしまったら、余計ツライですね。ストレートに、ムダだよと言ってもらったほうが、リセットできる気はします。
山田 なんぼでもリセットしたらいいのにと思います。
田中 社会の正しいストーリーしか許さないということだと、はみ出てしまった人からすると、きつい部分があるのではないかなと思います。
僕は『男が働かない、いいじゃないか』の中で、次のように書きました。
「すぐに弱音を吐き、困難があれば簡単にあきらめ、それを恥とも思わない」。人生は長いのですから、時にはこうした適当さも必要です。
1つのことに執着するのはいいことと思われがちですが、それが逆に足かせになってしまって新しい展開ができないことは、仕事でも人生でも、友人関係や夫婦関係にもあると思うんです。
山田 結局、そのことや終わってしまったことばかり気にかかって、新しいことに着手できない。それなら、ゼロにしたらいいと思いますよ。死ぬぐらいならね、本当に。
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競争しなければいけないとき、なるべく敵がいないところに行くのは、逃げではなくて戦略ですから