〈質疑編 “自分を開く”場づくりの仕組み〉
山納さん、坂倉さんに聞きたい8つの質問
1「創発」とは?
2 閉じていく場をオープンに保つにはどうしたらいいのか?
3 コミュニティスペースは、ビジネスとして成り立つか?
4 場がうまくいくのはノウハウやコツ、それとも個人の資質なのか?
5 『つながるカフェ』に書かれていた「自分を留守にしていた」とは?
6 自分から声を発することができない子たちの思いを引き出すには?
7 インクルーシブな空間をつくるには?
8 コミュニティスペースに来てもらうには?
質問1 「創発」とは具体的にどういうことか、それが起こる条件はあるのでしょうか?
山納 「創発」が起こる前提として、そこにいる人みんなが普通に話をできる状態、自分の持っているものを差し出せるような状態になっていることがとても大事だと思います。
コラボレーションは、3人いると起こると思っています。それは、何かをやりたい人、それを実現できる人、そして、やり続けなければいけない人。この3者が信頼できる関係性になっていると、物事が転がっていく。この3者がどうやったら出会うのかということを、僕は、Talkin’ Aboutをやりながらかなり考えています。
この本の中で「コラボレーションの作り方」という場づくりについて紹介しています。どうするかというと、今日はここに30人ぐらいの方が来ていますが、みなさんに、「切実に“やりたいと思っていること”や“やらなければいけないと思っていること”があるけれども、“できる人に出会っていない”、“どうしたらいいかがよくわかっていない”というものがあれば、それを出してください」と言って、5つぐらい書き出します。
そして、「1人3分ぐらいで、この5つの中から2つぐらいを選んで、自分が知っていること、できること、思っていることを話してください」とマイクを端からみなさんに回してお聞きします。そうすると、切実に誰かが何とかしたいと思っていることに対して、必要な情報や人脈がつながるんですね。もう少し深掘りしたいときは、どこか別室に行って話が続くこともある。こうしたことをTalkin’ Aboutで試しています。
大阪だとこれだけで成立するのですが、別の場所でやったときにうまく広がらないことがありました。そういう時は、横にいる方と3分ほど会話をした後で今のようなことをやると繋がって行くと思います。
コラボレーションやまちづくりは、ブリコラージュ(フランス語で寄木細工とか器用仕事といった意味)の要素が非常に強い。有り合わせのもので作るということです。
結局、自分の周りにいる人のできること、やりたいこと、やらなければいけないことを使って、いろいろなことを乗り切って行かないといけないのですが、そのときに、すごく構えたことを、すごく高いレベルでできるというよりも、「ちょっと人より知っている」とか「ちょっとできる」という人たちで何とかする。東京や大阪ですと、すごい人がいっぱいいるので、あまりそのようにはならないのですが、田舎の方に行ったりすると、そこにいる人たちだけでこの問題を解決していくということに、向かわざるを得ない。
創発というのは、周りにいる人たちの中で、やりたい人、やれる人、やらなければいけない人を意識していくことだというのが、僕の答えです。
坂倉 芝の家では、ほとんどが創発的な現象です。芝の家で何かを「実現する」という人は、ほぼいないんですね。
何かわからないけれども来て、来た人同士が話したり、知り合ったりするうちに盛り上がって相互作用する。偶然の要素が重なって、「じゃ、来週こういうことをやってみよう」といったことが起こる。
だから、最初から計画を立て、決められた材料を集め、化学反応させて物質を作る、といったプロセスではなく、いろいろな人が持っている思い、特技などの資源が集まってきて、それを混ぜているうちに新しいものが生まれる。
全てそうですね。レコードコンサートも、落語もそうです。初めから落語をやらせてくれと来ているわけではなくて、いろいろな中で、じゃ、やってみようかと始まる。そういう意味で、芝の家は創発の場かなと思っています。
次の質問
2 閉じていく場をオープンに保つにはどうしたらいいのか?