居心地がいいと思える空間を追求する

 上田 いつでも「困ったね」と言いながら、いったん手を止めて、その人の話を「うん、うん」と聞いてる。でも、そのうち、自分の仕事をしながら聞いてたりしてね。悩んでいる人ってコミュニケーションが難しいじゃないですか。

 山納 だいたいこじれていたりしますよね。

 上田 本当に。困った人の相談なんて、かっこよくなんかやれないわけです。悩みながら、自分の嫌なところもいっぱい見ながら、思い悩んで、気付きながらやるんですよね。
でも『つながるカフェ』の中に、場所をやっている以上逃げられないというか、開け続けなければならないことのしんどさを、すごくお書きになっていたじゃないですか。

山納 はい。でも、本を書いたのは僕ですが、それを一身に背負っているのは假奈代さんですからね(笑)。それがすごいなと思って、取材に行かせていただきました。

僕は、2004年にコモンカフェやコモンバーシングルという日替わりマスターのカフェやバーを始めたのですが、1年ぐらいたってすごく悩んだんです。
毎日店主が変わるので、常連がつかないんですね。週1回、私がマスターを務める日は常連が来てくれるのですが、日によって歴然とした差がでてきて、お客さんは店主につくんだなと思いました。

店主は営業マンみたいなもので、店主が多ければお客さんも増えてうまくいくと思ったら、どうもその逆で、例えば、假奈代さんがいて話を聞いてもらえるからお客さんは来るのであって、コロコロ主人が替わるような店に行きたがりはしないということ。それに気付き、普通の店ってどうなっているんだろうと、当たり前のことにがすごく気になって、フィールドワークを始めたんです。

流行っているカフェから、何十年続いている喫茶店や入りにくいお店にも構わず入り、話を聞いてくるということをずっとやってきました。「サード・プレイス」や「場」といわれるところを回って、中には、一見をまったく受け入れてくれないような厳しいサード・プレイスもあれば、新しい人を見事に受け入れるような場もある。その場の度量というのでしょうか、場を司っている人の才覚なのか、懐の深さなのか、そういうものによって場は保たれている。

場づくりというものは、究極的には人間力に辿りつくなと。ほかに、デザインなどいくつか要素はあるのですが、人を受け入れる度量や、常連も一見も居心地がいいと思える空間を追求したほうがいいな、とだんだん思うようになりました。

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まち歩きを通して街の課題が見えてくる